国保の短期保険証世帯に対し、有効期限の短い(最短で8日)「受療証」を川崎市が発行していることが発覚した。これは市内の医療機関を通じ明らかになったもの。
「受療証」は短期保険証の更新時に発行されていた。これにより慢性疾患など治療継続が不可能となることから、6月29日、川崎市社会保障推進協議会(協会川崎支部が加盟。以下「社保協」)は市年金課に経緯を質すとともに是正、発行中止を求めた。
経済余力がなく保険料を1年間滞納した国保世帯には、10割負担の「資格証明書」が発行されるが、川崎市では保険料の分納制約とその履行を条件に有効期限が6カ月を上限とする「短期保険証」が発行されている。
今回、問題となった「受療証」とは正規の保険証の更新時に、手続き上の理由で保険証の代替として一時的に交付するもの。効力は正規の保険証と同等。短期証の代替交付や短時日の有効期限設定は法の範囲外で、いわば悪用、乱用にあたる。
社保協に報告のあったこの悪用「受療証」の19例は、病気が悪化したため保険証を求めて国保の窓口を訪れ、分納誓約の金額に応じて有効期限の短い「受療証」が発行されていた。14例は慢性疾患等で定期受診が必要で、うち4例は入院が必要なケースだった。
本来、分納金額の多寡によらず「ワン・コイン」でも分納履行の実績があれば短期保険証を交付するのが川崎市の運用原則。受療証の悪用は制度の大幅転換となる。実際、短期証世帯の3名が切り替えられている。
交渉の席で、市の笹野年金課長は「未納者対策で実施していない」「受診の機会の確保のため」と説明。あくまでも滞納制裁としての一環であることを否定。市側が当日提出した6月25日付けの文書「受療証の取扱について」のなかでも短期証の交付要件が一部未了の場合に交付するとし、緊急避難的なものとした。また、受療証のこの運用の開始時期は不明、発行枚数も不明、と無責任な態度に終始した。
社保協は、最短6日、最長で2カ月の期限のこの受療証世帯に対し、期限切れ後行政が放置していること、保険料減免や生活保護の制度説明がないこと、極めつけは肝がんの患者に有効期限18日の受療証を発行していると指摘。これらは受療権の保障とは逆行している、滞納金額の徴収、滞納整理優先の姿勢を改めるべきだと、再三、是正を要求。受療証の悪用の即時中止を求めた。市側は是正については言及をした。
神奈川県保険医新聞より抜粋
(2010年7月25日・第1798号)