2010年2月13日、神奈川県保険医協会はレセプトオンライン請求義務化撤回訴訟原告団総会を開催した。当日は霙混じりの悪天候にもかかわらず、全国から横浜に46名の原告が結集し、支援者含め96名が参加。勝利宣言を行い、会場は寒さを吹き飛ばす熱気に包まれた。
総会は、田中正則原告団世話人会幹事(協会監事)が議長として登壇し、開会を宣言。最初に平尾紘一原告団団長(協会名誉理事長)が挨拶に立った。平尾団長は訴訟を準備していた14カ月前を振り返り、当初、弁護団から「行政訴訟は3割程度しか勝ち目がなく、裁判官に『原告を勝たせてあげたい』と思わせたとしても五分五分」と指摘されたこと。そこからスタートし、オンライン請求義務化撤回の世論化を図るためマスコミの注目を集める必要性から、原告団を立ち上げる際、弁護団から「1千名以上の原告団」の組織が求められたとした。「どうなるかと思ったが1744名の原告団にすることができた」と話し、その結果、多くのマスコミが好意的に報道してくれたとして参加した原告に感謝の意を表した。
さらに、義務化撤回までの取り組みを概括。「民主党政権になっても、要請を粘り強く行ってきた」と法廷外での取り組みも紹介。そして昨年10月9日に示された省令改正案に対し、2220通ものパブリックコメントが寄せられ、義務化撤回につなげることが出来たと評価した。平尾団長は、「最高裁まで闘う覚悟をしていたが、義務化が撤回でき私は幸せ者だ」と挨拶を終えた。
続いて、入澤彰仁原告団世話人会幹事長(協会副理事長)が、義務化撤回訴訟の取り組みをまとめた総括案について提案。入澤幹事長は、2006年4月に出されたオンライン請求を義務化した省令111号による影響を同年8月に調査し、協会会員の12.3%が開業医をやめると答えたことを問題視。「仲間を守る闘い」として義務化撤回を求めて、署名運動・厚労省交渉・国会議員要請などに取り組んできたと述べた。しかし、義務化撤回に至らなかったことから訴訟に踏み切ることとし、弁護団の協力の下、検討を進め、オンライン請求の義務のないことを確認する当事者訴訟として提起したと報告。
論点に(1)仲間を守る観点から営業の自由・憲法22条違反、(2)患者のプライバシーを守るため請求方法の選択を確保する観点から保険医の自己決定権・憲法13条違反、(3)国民の権利義務に大きく関わることを省令で決めたという行政の原理違反・憲法41条違反―の3点をたて法廷論争に臨んだとした。法廷では被告である国は、原告適格などの入口論に終始し、まともな主張さえできず、我々が圧倒したと強調した。
しかし、残された課題として、電子レセプト原則義務化、義務化撤回も省令改正で行われたことから憲法41条違反の問題等があると指摘。今後、広く国民的な運動として取り組んでいくと述べ、訴訟は一旦終結する提案を行った。
質疑では憲法41条問題に集中し、入澤幹事長は全国的な運動として議論していくと答弁。小賀坂弁護団事務局長は「これだけ大きな問題を省令で変更している。医療行政においては局長通知や課長通知でも大きな改変が行われており、対策として医療基本法などの立法化運動も重要」と述べた。
その後、提案された「レセプトオンライン請求義務化撤回訴訟の総括」案は承認され、この訴訟を勝利と位置づけると共に一旦終結させ、第4回口頭弁論で勝利を確認する弁論を行い、訴訟の取り下げ手続きを進めることを決めた。
続いて原告の1人である池川明協会理事長が「勝利宣言」を行った。池川理事長は、勝利の喜びを皆で共感したく「勝利宣言をこの手でしたかった」と述べ、「勝利宣言」を高らかに読み上げて総会を終了した。
神奈川県保険医新聞より抜粋
(2010年3月5日・第1785号)