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使用に注意を要するハーブ~セント・ジョーンズ・ワート~ 

皆さんは、セント・ジョーンズ・ワートと云う名を聞かれた事がありますか?軽い欝<うつ>症状等に効くハーブの一種として、ハッピー・ドラッグとも呼ばれています。この植物は学名Hypericum perforatum<ハイペリクーム・ペルフォラートゥム>、和名セイヨウオトギリソウ(西洋弟切草)と呼ばれる欧州から中央アジアに掛けて広く分布する多年生植物であり、ハーブとしては開花期に収穫した地上部分を乾燥させたものや、油脂腺を持つ小さな楕円形の葉を用います。また、キリストに洗礼を施した聖ヨハネが処刑されたとされる6月24日前後に、縁に小さな赤黒い斑点を持つ黄色い5枚の花弁から成る花が房状に咲き誇る為、聖ヨハネの血とされたことからセント・ジョーンズ・ワートの名が有りますが、古くから止血・収斂<しゅうれん>・鎮痛・消炎作用を有する為に痔・火傷・腫瘍等の外用として使われており、ギリシャでは「悪魔を払うハーブ」として、東洋では根茎を含む全草を乾燥させ漢方の「ショウレンギョウ」として用いられてきました。

医療保険の整備について後進国である米国等では、代替医療の一つとして安価な向精神薬の一種として健康食品に準じて扱われていますが、欧州では医薬品として医師の処方箋が必要な薬品として扱われています。その理由として、精神に作用し投与量の急激な増減が危険でもあること、肝臓の解毒に関与する或る酵素の活性を上げる為に、その同じ酵素を利用する他の薬品類、特に抗凝固剤、心臓の薬、喘息の薬、てんかんの薬、経口避妊薬、免疫抑制剤やエイズ(HIV)の薬と併用すると、その血中濃度が維持できずに効果を減弱させてしまいます。またSSRIや柴胡加竜骨牡蛎湯<サイコカリュウコツボレイトウ>、半夏厚朴湯<ハンゲコウボクトウ>といった精神に関与する薬の作用を増強します。その他ハーブ類ではカノコ草(ヴァレリアン)等との併用も危険です。

妊娠中や医療機関から投薬を受けて居られる方は、必ず医師や処方箋調剤の薬局薬剤師に御相談頂き、使用量を決定される様にして下さい。また、急激な内服中止は思わぬ症状を呈することもありますので、薬剤師等と御相談の上、加減するようにして下さい。