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ベビーパウダーとアスベスト
建造物の防燃断熱材や高熱のかかるブレーキパッド等に使用されていたアスベストについて、それが使用された建造物や製造工場従業員及び近隣の民家で悪性中皮腫という一種の「がん」の発生が社会問題となっています。その一連の報道の中に「ベビーパウダーにも含まれる」との記事があり、育児中の家族や、昔使用したという方に混乱を招いているようです。
これは1987年7月にベビーパウダーの主成分の一つであるタルク(滑石)という鉱物が採れる蛇紋岩層に同じく存在する白石綿が一部原料に混入していたことが分かり、ニュースとなったものを今回の報道時に引用したものと思われます。当時の労働省産業医学総合研究所の調査によると、11社19製品を調査し、5社5製品のベビーパウダーにアスベストの混入が認められたとのことで、その後ベビーパウダーに用いられるタルク中のアスベスト試験法が定められ、現在の製品には混入してはいません。(昭和62年11月6日付薬審二第1589号各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省薬務局審査第二課長通知)
アスベストの医学上の問題点は、その微細な針状の繊維という物性に由来するものであり、化学的な組成は、地球上の他の鉱物と同様であり、発がん性の元素や化学物質が含まれている訳ではありません。なお、工業用のアスベスト代替品としてのロックウール(岩綿)やグラスファイバー(ガラス繊維)も一応、肺に刺さることはないと言われています。
また近年、タルクの代用品としてコーンスターチ等を用いたシッカロールも発売されています。しかし医学的な観点からはタルクの様な無機物よりもトウモロコシ等の有機物の方がアレルギーを遥かに強く起こし易く、手術用のゴム手袋等の表面保護剤としてはタルクの方が安全とも言われています。いずれにしろ、現在国内市販されているベビーパウダーには、アスベストの混入はありませんので、安心してお使い続けて頂いて構わないものです。
(最終更新:2018.12.25/藤田倫成)